経済のグローバル化が進み、国内企業は徐々に活動拠点や生産拠点を海外へも拡大しています。日本のものづくりを支える中小製造業が生産拠点や市場を求めるのはもちろん、販売・サービス業やITサービスを提供する企業も、新たな市場を目指して、これまで以上に海外進出を進めています。
これまでは海外に進出していなかった中小企業でも,中国やASEAN諸国といった海外への進出を検討してきています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威により、国内回帰の動きが見られはするものの、海外への進出が依然として重要であることは、疑いの余地はありません。
海外進出としては、以下のような局面が考えられます。
(1) 貿易ベースでの進出(海外企業との単純な輸出入の商取引)
(2) 契約ベースでの進出(業務提携、代理店契約、技術供与、生産委託等)
(3) 組織ベースでの進出(駐在員事務所、支店、現地法人開設、現地工場、合弁会社立ち上げ等)
しかしながら、局面の度合いにかかわらず、海外進出には様々なリスクを伴います。海外進出にスピード感をもった決断が必要であることもまた一つの事実ですが、他国では、多様な民族性を背景に、ビジネス上、契約上の慣習が異なることから、信頼関係にのみ依拠しがちな日本人的な感覚はかなりの危険を有し、結果として、トラブルとなることも多々あります。また、訴訟や仲裁になった場合には、日本語や英語に対応できる現地の弁護士を雇う費用、翻訳コストのほか、解決に至るまで長期間を要することが多く、想像以上の費用がかかることもあります。
従って、まず、トラブルが発生することを極力回避する予防法務の観点からの対策が必要であり、海外進出を実施する前から、進出企業と進出先の状況を踏まえた法的リスク、必要な手続き、トラブルの予防策等について対策することが欠かせません。そして実際にトラブルが発生した時にはどのような方針で臨むかを迅速に決断することも必要です。
検討が必要なこととしては、例えば、以下のような点が考えられます。
- 海外進出形態の検討
- 海外進出時の必要な手続きの実施やトラブル予防策、リスク回避策、対処策の検討
- 海外企業との基本取引契約書、合弁契約書等の作成、検討
- 海外現地法人における従業員の管理の就業規則の策定、検討
- 海外現地法人内、あるいは海外企業とのトラブル発生時の早期かつ適切な対策の検討
弊所では、シンガポール、ロサンゼルスといった海外での職務経験を活かしつつ、海外の提携事務所、専門家の協力を得て、迅速かつ適切な対応に努めております。
一方で、海外進出をしている企業が、現地法人で雇用しているローカル人材を長期間日本国内で技術を習得させるために招聘する等の場合、在留資格申請が必要になる場合があります。
そのような場合、内容に応じた申請手続きをただ行うのみならず、稼働状況や社内規則等の遵守体制を構築する必要があり、他業種の専門家(行政書士、社会保険労務士)とも提携をして対応させていただきます。